■東日本大震災時、消防庁長官として刻々変化する被害状況への対応と
  迫られる決断に立ち向かった記録!

我、かくえり
東日本大震災と日本の消防
(消防庁長官としての体験を中心に)
久保信保 著   四六判/228頁 定価(1,500円+税)
未曾有の東日本大震災時、消防庁長官の職にあった著者が、緊急消防援助隊の出動や福島第一原発事故への放水活動の指示等、マニュアルのない中で、刻一刻と迫られる決断など、様々な体験や思いを“安心・安全”を担う、今後の消防防災行政のため語り継ぐ!
 主 な 目 次         内容の一部見本(PDF)
はじめに
第1章 東日本大震災と消防の活動
 東日本大震災の特徴
被害のほとんどは津波が原因/福島原発事故も主因は津波/負傷者より遙かに多い死者数
 大津波とそれへの対応
宮古ではほぼ100%津波の被害/リアス式海岸での被害と平地部での被害/地域防災計画の見直しと防災意識の向上/具体的な取組への動き
 地元消防の活動
消防の実働部隊は市町村/県内、県外の応援体制/地元消防の活動と被害/安
 緊急消防援助隊の派遣
災害対策本部の設置/緊急消防援助隊とは/緊急消防援助隊の活動
 緊急消防援助隊の課題
初めての事態に直面/運用面に係わる事項/発想の転換や制度の変革を要する事項/緊急消防援助隊に関する経費
 空路による搬送の着想の原点
平成22年総合防災訓練/空路による搬送/直下型地震、ミサイル発射事案など
 福島第一原発事故と消防
原発事故の発生と原災本部の設置/水素爆発と統合本部の設置/大都市消防の連携プレー
 原発事故への出動を巡る問題
原発事故対応は消防の仕事か/大都市消防連携作戦の課題/原災本部長名の指示書/隊員の健康管理
 指示系統の一本化と危機管理
指示系統の一本化/危機管理の鉄則/勝俣会長からの要請
10  いわゆる「吉田調書」の問題
放水の効果/免震重要棟の存在/消防は「遅い」とは
11  現地確認と両陛下への御進講
現地確認/各消防長との親交/両陛下への御進講
第2章 消防防災の担い手
 消防庁と消防財政
消防庁の役割/消防庁の組織・人員/消防財政
 都道府県の役割
都道府県の消防防災体制/航空消防隊/消防学校
 市町村の役割と常備消防
市町村の役割/常備消防の組織と階級/消防職員の団結権問題/団結権問題の感想
 消防団と自主防災組織
消防団/自主防災組織/消防団等充実強化法の制定/シームレスな地域総合防災体制の構築
第3章 情報通信体制の整備
 住民への情報伝達体制の充実強化
情報伝達体制のあり方/Jアラートの整備/住民への情報伝達元年
 衛星通信手段の確保
東日本大震災と通信回線/自治体衛星通信機構/地域衛星通信ネットワークの課題
 消防救急無線のデジタル化
デジタル化決定への経緯/消防本部の広域化との関係/東日本大震災以後の新たな財源措置
第4章 消防の広域的対応
 消防の広域化
市町村消防と広域化の要請/平成18年の消防組織法改正/第26次消防審議会
 東京消防庁と大阪消防庁構想か
東京都の消防/東京消防庁の管轄区域の拡大/大阪消防庁構想/大都市地域特別区設置法
 都道府県消防構想と国家消防構想
救急業務と都道府県消防構想/緊急消防援助隊と国家消防構想/日本版FEMA創設の議論
第5章 救急業務の状況
 激増する救急需要への対応
救急業務の現状と課題/消防と医療の連携/搬送先に到達するまでの対応/民間病院への地方財政措置の拡充
 地元の利を活かせる消防団の活動は重要
我が国の救急業務/諸外国の消防と救急業務/救急業務の有料化問題/埼玉県消防防災ヘリ墜落事故
第6章 火災予防行政の状況
 福山ホテル火災と適マーク制度
福山市ホテル火災と長官調査/全国一斉緊急点検/新たな適マーク制度の創設
 火災予防行政を巡る議論
あり方検討会での当初の議論/東日本大震災も踏まえた更なる検討/平成24年の消防法改正
 危険物行政の動向
東日本大震災と危険物行政/危険物規制の緩和の動き/危険物規制の強化の動き
第7章 消防の新たな使命
 有事関連法と消防の役割
集団的自衛権の行使容認/周辺事態法/武力攻撃事態法と国民保護法
 国際緊急援助隊
ニュージーランド(NZ)南島での地震/国際消防救助隊と国際緊急援助隊/皇室と国際緊急援助隊
 多様な災害への新たな対応
消防の使命/多様な災害に関する消防審議会答申/鳥インフルエンザと豪雪に関する思い出/東日本大震災での新たな具体の活動
第8章 最近の大災害とそれへの対応
 8・20広島土砂災害
広島土砂災害の概要/砂防ダムと土砂災害防止法/住民への警戒避難体制
 9・27御嶽山噴火
御嶽山噴火の概要/火山と噴火予知/救助・捜索活動
終わりに
〔はじめに〕より
 東日本大震災からまもなく4年を迎えようとしている。その大地震は、(中略)未曾有の大津波が、東日本の沿岸部を襲い、死者・行方不明者2万人を超える大惨事を引き起こした。避難誘導などに携わっていた2百数十人もの消防職団員も殉職した。
 私は、この大震災にあたって、消防組織法に規定する指示権を行使して、緊急消防援助隊を出動させた初めての消防庁長官となり、全国の消防職員の5人に1人が被災地に応援のため出動した。東京電力の福島第一原子力発電所の事故に対しても、東京消防庁始め大都市の消防本部が連携して放水活動に従事した。
 東日本大震災の後、国や地方公共団体などの各部門において、この大震災を教訓に各種の計画の見直しが進められ、危機管理体制の強化が図られようとしている。ただ、その見直しは、当然のことだが、平常時に行われており、場合によっては体験者がいない中でなされることもあるだろう。私は、消防庁長官として東日本大震災に直面し、現実に、法律にもマニュアルにも描かれていない世界で、刻一刻と次々に決断を迫られていった。
 元々、私は、自治省(今の総務省)に入った事務官であり、消防の専門家ではない。(中略)消防庁長官に就任した。消防の経験は少なかったものの、いろんな局面で、絶えず、危機管理の仕事に携わってきた。
 消防庁長官として東日本大震災に遭遇したとき、これは天命なのだと思った。それまでに公務員として経験してきたことは、すべて、この日のための訓練だったとさえ思えた。
 (中略)
 私は、東日本大震災の8か月前に消防庁長官に就任し、大震災をはさんで2年2か月にわたってその職責にあった。東日本大震災を始めとする在任中の様々な体験や幾多の思いを将来に語り継いでいくことが、退官後の私の最も重要な使命だと考え、本書もその一環として執筆したものである。東日本大震災での対応を記録に残し、在任中の政策決定や政策変更の理由・背景を説明することで、我が国の消防の現状と課題が明らかにできればと考えている。
 全国の消防防災の関係者や消防防災に関心をお持ちの皆様には、当時の消防庁長官が何を考え、判断を下していたのかをお伝えできればと思っており、また、広く一般の皆様には、我が国の消防がどんなものなのか、その一端なりともわかっていただければ幸いである。消防庁では、今や東日本大震災を体験していない職員がほとんどになった。消防庁の現役の皆さんや全国の消防機関の皆さんには、本書が参考になり、国民の皆様の安心・安全のため今後の消防防災行政に、より一層ご尽力されんことを心から期待する。

      平成27年新春
                                                                 久保信保